一般社団法人日本健康食育協会と公益財団法人日本ヘルスケア協会の主催の「お米で日本を元気にするプロジェクト」の第1回フォーラム・シンポジウムが7月7日(日)に日比谷図書館文化館・大ホールで開催され、お米の消費、生産に関わる人はもちろん、米穀に未来を見る参加者で熱気あふれる会場となった。イベントはオンラインで同時配信され、総参加数は240人を超える一大イベントとなった。特別基調講演では京都大学名誉教授の森谷敏夫氏が「体脂肪を増やし、筋肉を落とす、糖質オフのリスク ~ダイエットと血糖コントロールの危険な関係~」を講演。主催者セミナーでは日本健康食育協会代表理事の柏原ゆきよ氏が「ごはんを食べずに太る人、山盛りごはんで痩せる人 ~食べ方でこんなに変わる心と身体~」についてセッションを行った。
「日本をお米で元気にするプロジェクト」は、米・ごはん食の新たな価値を世界に発信すべく発足。
日本人の健康長寿に米食が大きな役割を果たしていることが近年の研究で次々と明らかになり、和食をはじめとした「ごはん食」の価値が世界中からも注目を集めている。また、日本の水田稲作はサステナブルな農法としてSDGsとしての価値も評価されている。これらの評価により、食料安全保障の観点から「ごはん食」および稲作を守り、継承していく重要性はますます増している。
シンポジウムは、「日本をお米で元気にするプロジェクト」を通じて「ごはん食」が持っている健康価値、サステナビリティなど多面的な価値を世界に向けて発信し、同時に日本人の健康を「ごはん食」を通じて推進し、稲作を基盤とした地域の活性化・保全活動を展開すべくスタートした。
イベント冒頭に代表として登壇した柏原ゆきよ氏は「私たちはお米の文化を守り、未来へ継承していく活動をしています。私自身は管理栄養士として、一番重要な食がお米である、そしてそのお米の消費が危機的であることに行きつきました。このままでは美味しいお米が将来は食べられなくなるのではないか、という農業の現場にも触れました。このまま見てられない、と思い、日本のお米を守るプロジェクトとして始めました。国民一人一人が日本人で良かった、お米があってよかった、と思えるようお米の文化をつなげていきたいと思います。私自身はこの活動をあと50年は続けるつもりです。50年先の日本でもお米を美味しく食べられる世界を実現すべく皆様と一緒に活動していきたいと思います」と話した。
続いて挨拶に立った農林水産省農産局穀物課で米麦流通加工対策室長の葛原祐介氏は「私は米の消費拡大を担当しています。お米は主食と思われていますが、毎年10万トンほど消費が落ち続けています。ピーク時の昭和30年代は一人当たり年間120キロ食べていたのが今では半分以下の年間50キロほどです。すると当然、お米の生産にも影響します。さらに今まで自給していたお米が他の主食にとって代わられるということは、日本の食品自給率の低下も招きます。ライフスタイルが変化し、食生活の多様化で起こることでもありますが、食料安全保障の観点からみると、お米を食べないと稲作つまり水田が減る、すると水を管理するダムの重要性も薄れてくる。つまり食の変化が環境にまで影響を及ぼすのです。一番効果的なのは、やはり信頼できる人から『お米っていいんだ』と伝え納得していただいた上で食べてもらうことです。だからこそ、このイベントを通じ、参加された皆さん一人一人がお米の伝道師になっていただきたいと思っています。ですから本日の講演を通じてしっかりとお米の良さをブラッシュアップしていただきたいと思っています。食育の観点からもお米の重要性を論理建ててご紹介いただけると思います」と語った。
特別基調講演では森谷敏夫氏が「体脂肪を増やし、筋肉を落とす、糖質オフのリスク~ダイエットと血糖コントロールの危険な関係~」と題し、講演を行った。
森谷氏は「現在、女性を中心に〝隠れ肥満〟つまり『正常体重肥満』が広がっています。身長体重が普通なのに体脂肪率が高い人が増えているのです」と話す。
そんな中、行き過ぎた糖質制限がまん延し「糖質制限パニック」が起こっていることを指摘。1970年の日本人の砂糖消費量を100%として、2012年には60%に低下しており、同時に糖質の摂取量も減少しているにも関わらず糖質制限の傾向が広がっていることに警鐘を鳴らした。
森谷氏は「糖尿病は正しくは〝血管ボロボロ病〟とも言うべき疾患で、血糖値の上下に一喜一憂する病気ではないのです」と掲げた。人間は糖質を肝臓にグリコーゲンとして蓄積される。森谷氏は「脳と筋肉の非常食であるグリコーゲンは、肝臓、筋、脂肪細胞に3~4倍の水と糖質が一緒に結合したエネルギー源である。4日間の超低カロリーダイエット(405kcal/日)では、体脂肪の減少なしで、体重は多い場合4~5kgも落ちる可能性がある」という論文結果を紹介し、「糖質制限が正しいならば糖尿病は減っているはずなのに、そうではない。糖質制限を疑うべきなのです。肥満の原因は1日わずか20kcalの摂りすぎであり、糖質とは無関係なのです。糖質を主とする体のエネルギー減の約2割は大脳、6割が筋肉で消費されるため、ダイエットは運動でなされるべきなのです」と示した。
続いて主催者セミナーで柏原ゆきよ氏が「ごはんを食べずに太る人、山盛りごはんで痩せる人 ~食べ方でこんなに変わる心と身体~」についてセッションを行った。
柏原氏は「ごはんは太る、というのは誤解で、太りにくく病気になりにくい体を作る上で欠かせない主食です。一つ注意すべきは食べ方が大事ということです。筋肉と骨の維持、体力の維持、体温アップ、腸内環境改善のすべてに大きな影響を与えるお米の存在をもっとよく知っていただきたいと思います」と語る。
糖質と炭水化物はイコールではなく、どんな食材から摂るかで大きな違いが生まれる。そのうえで米食が適していることを紹介した。
そして「お米は炭水化物、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維を含むマルチ食材と言えます。お米が最適な理由は7つあります、一つに余分な資質を含まないことから、食事のカロリーバランスを整えます。二つ目は加工が少なく、余分な調味料、油、添加物が入りにくい点です。三つ目は腹持ちが良く、過食を防ぐことです。四つ目がアミノ酸スコアにおいて小麦が35であるのに対しお米は倍近くの65であり、たんぱく質が優秀であることです。五つ目に食物繊維が豊富であること。六つ目がレジスタントスターチなど機能性をもっていること。七つ目が調理が簡便であることです」とお米の価値を示した。
そのうえで、食べ方として日常食では一汁三菜をお勧めとし、多様性ある食べ方としておかず中心の食事でバランスをとることを紹介した。柏原氏は「ごはんをしっかり食べることで燃料になります。具沢山の味噌汁は体を目覚めさせる着火剤の役割を果たします。そして少な目のおかずはたんぱく源として機能します」とそれぞれの役割を説明。
ごはん主体の食事が日本人の体質にあっており、体力がついて疲れにくくなるうえ、太りにくい体質を作りだす食だということを示し「とりわけ朝ごはんにお米を摂ることがとても重要です」と付け加えた。
活動報告ではゴールドジムなどフィットネス事業を展開する株式会社THINKフィットネスが登壇。2018年に店舗で日本健康食品協会の「大人の食育セミナー」を開催し、2019年にはゴールドジムアカデミーに「健康食育」を導入していることを紹介。食による体作り、栄養指導に力をいれていることを説明した。
続いて協賛企業からプロジェクト協賛商品の紹介が行われた。永谷園の「フリーズドライタイプのあさげ」、福井県の「いちほまれ」、酒田米菓の「ミライオニギリ」、コラソンの「KOJI DRINK A 100ml」、宮崎県いちはさま産の「遊佐の金のいぶき」、食ライフデザインの「スラメシ」のプレゼンが実施され、お米で日本を元気にするプロジェクトに賛同する企業・団体より想いのこもった商品が披露された。
現地およびオンラインで200人を超える賛同者が集った「お米で日本を元気にするプロジェクト」は大盛況で幕を閉じ、2回目は11月を予定しているという。
実施概要
日時:2024年7月7日(日)13:00~16:30(zoomウェビナーオンライン同時配信)
会場:日比谷図書館文化館・大ホール
主催:一般社団法人日本健康食育協会 公益財団法人日本ヘルスケア協会
商品協賛:永谷園、福井県庁、酒田米菓、遊佐、コラゾン、食ライフデザイン
後援:農林水産省、千葉県匝瑳市