公益財団法人日本ヘルスケア協会(JAHI)は6月13日(木)に、東京都中野区(酒井直人区長)との中野区地域包括ケア推進パートナーシップ協定(NIC+:ナカノ・インクルーシブ・ケア・パートナーシップ)に基づいた区民向け健康イベント「第1回 中野健幸どまんなか市」に参画した。「第1回 中野健幸どまんなか市」は中野区地域支えあい推進部 地域包括ケア推進課の主催で開催。会場となった5月に移転したばかりの中野区新庁舎1階の区民の憩いの場「シェアノマ」とミーティングルームには、初開催にも関わらず約300人の区民および関係者が集った。
「第1回中野健幸どまんなか市」は、中野区とNIC+協定を結んだ合計10の事業者・関係団体の協力のもと開かれ、各団体が、健康チェック機器を用いた体験会、各団体の知見を持ち寄ったインフォメーション展示、健康にまつわるセミナー、サンプリングを開催した。イベントは、事前告知なく平日の10時~15時という限られた時間での開催であったものの、特に高齢者を中心に人が人を呼び、だれもが真新しい取り組みに興味を示し足を止めた。
JAHIは体験会、展示、セミナー、サンプリングの全てで出展し、多くの区民と触れ合い、各ブースで行列が途切れることがなかった。
体験会、展示、サンプリングではJAHIの「生き活きライフ部会(フレイル部会)」「在宅感染症予防部会」が中心となって来場者に対応した。
(参考記事:【NIC+協定締結】小原理事が中野区を表敬訪問)
体験会では握力測定・血中酸素濃度測定・ヘモグロビン推定値・骨密度測定を設置。中野区が用意したスタンプラリーに沿って、訪れた区民の健康体験に応じた。
握力測定では「もう何年も握力を測っていないけど、何がわかるの?」といった質問が参加者から投げかけられ、体験をサポートしたフレイル部会の佐藤さんは「握る力が衰えるとフレイル傾向が分かりますよ」とアドバイスを送る。佐藤さんが「しっかり握って日頃のうっぷんを晴らしてください」と語り掛けると、最初は不安そうだった参加者も握り終えたころには笑顔になり、会場は体験会を超えたコミュニケーションの場となった。
驚くべきは、参加者(中野区民)の健康に対する意識の高さであり、そしてその意識に応えるのはコミュニケーションであるべきだということを証明した。
血中酸素濃度測定を担当したフレイル部会の横井さんは「ただ計って終わり、という人はほとんどおらず、何か一つは健康への不安を吐露する人ばかりでした」と健康相談の本質を語り、提供する側も学びのあるイベントとなった。
ヘモグロビン測定値を担当したフレイル部会の山下さんは「私たちはヘルスケア産業に関わっているため、こういった簡単な健康チェックが行える機会になじみがあります。でも今回訪れた皆さんは『興味はあるけれど、機会がない』という方が多く、こういった健康イベントの価値を再確認しました」と語った。
骨密度測定は、靴下を脱いだ足にクリームを塗って測定する、やや手間を擁する体験であり、一人あたり3~5分は要する。終わってみれば測定結果は約80件に上り、開催期間中ほぼ途切れず測定していた計算になる。
骨密度測定を担当したフレイル部会の鈴木さんは、「ほとんどの方が骨密度が低い結果が表れており、この結果を共有し中野区民の骨密度を上げる取り組みにつなげたいですね」と実感とこの先を見据えた。
展示では「在宅感染症予防部会」が中心となり、特にこの時期多くなるマダニやカメムシ、また海外で増加しているトコジラミへの対応などを呼び掛けた。
在宅感染症予防部会の今西さんは「参加者に高齢者が多く、住環境に不安を抱えている人が多く足をとめていました」と語った。
サンプリングはJAHI加盟の各社の協力で、高たんぱくスナックや煮豆、オーラルケアに役立つ食品やサプリメント、マスクといった衛生用品から入浴剤といったヘルスケアグッズが詰め合わされ、計250個が配布完了した。
ミーティングルームで開催されたセミナーでは
①「民間が取り組む地域包括ケアシステムの役割と意識」福田英二氏(スギ薬局)
②「認知機能を高めるハンドケア」池田明子氏(ソフィアハーモニー)
③「窓から考える健康快適生活とは」白瀬哲夫氏(YKK AP)
④「長生きの秘訣⁉『噛むこと』の大切さ」松川泰治氏(UHA味覚糖)
⑤「油断大敵!~正しい感染予防~」吉田智氏(サラヤ)
といった、もう一段踏み込んだヘルスケア実践のヒントが披露されるとあって、他団体の専門家も足を運んだ。
主催の中野区地域支えあい推進部 地域包括ケア推進課のスタッフは「わたしたち自身も、区民のみなさまが抱える健康に対する興味関心の高さに驚きました。ぜひ第2回はより大きなフィールドを使い、共催という形でイベントを行いたいですね」と話す。
イベント終了時間の15時を過ぎても列が途切れることはなく、「次があったらぜひ区報で知らせてほしい」と期待を寄せる区民もおり、 中野区と区民をヘルスケアでつなぐ「第1回健幸どまんなか市」は大盛況のうちに幕を閉じた。
なお、中野区新庁舎は1階がカフェテラス、コンビニを含んだ区民の憩いの場で、2階より先が中野区役所の各窓口となる。中野区によると役所手続きに訪れる人数は1日約2,000人だそうで、初開催のイベントに300人が足を止めたことは驚くべき結果と言えよう。
「第1回中野健幸どまんなか市」開催に携わったJAHIの佐藤聖常務は「今回のイベントは、幸い多くのご来場者、JAHI出展参加企業およびセミナー講師の皆様方のご協力を得て、第1回目としては大きな効果を得られたと考えています。今後2回目、3回目とネットワークの輪を広げ、産官学によるヘルスケア社会実装のモデルが構築できていけば良いな、と考えます。良い機会を与えて頂いた中野区役所の皆様をはじめ、ご指導を頂いた帝京平成大学の小原道子教授、献身的に動いたスタッフの皆さんに厚く感謝いたします」と笑顔でイベントを締めくくった。