人と地球との関係を見直し全体を最適化する概念「プラネタリーヘルス(PH)」の実装に向けた活動が、いよいよ本格化してきた。さる3月3日、日本ヘルスケア協会(JAHI、今西信幸会長)は、「プラネタリーヘルス・イニシアティブ設立記念シンポジウム2024」を開催した。人の健康と食との関係を追求する医師などの聴講者が会場を埋め尽くし、登壇者1人1人の言葉に熱心に聞き入っていた。シンポジウムの最後に、PHの社会実装を目的に設立されたプラネタリーヘルスイニシアティブ(PHI)代表で地域創生医の桐村里紗氏が、「プラネタリーアクション宣言」を声高らかに発表している。
冒頭に挨拶した今西会長は「高齢化が進み疾病率が上昇している今日、皆保険制度を守るヘルスケアの重要度が増しているが、その推進は既存概念の踏襲では難しい。これからは医・食・農の連携が不可欠であり、その鍵となるのがプラネタリーヘルスである」と語っている。
その後、桐村代表の考えに賛同しPHで地域創生を進める鳥取県江府町とJAHIによる「プラネタリーヘルス連携協定の締結セレモニーが執り行われ、ミス江府町のmAru氏の歌と演奏により、「Planetary Symphony」も披露された。
基調講演として、桐村氏が「プラネタリーヘルスと世界における日本の役割」、また特別講演として立正大学地球環境科学部特任教授・横山和成氏が「微生物が奏でるシンフォニー」と題して話したのに続き、ふじのくに地球環境史ミュージアム館長の佐藤洋一郎氏をファシリテーターに、医・農・食の識者によるパネルディスカッションが催された。
シンポジウムは、行きすぎた経済資本主義により地球の健康が悪化し、人類の生存が危ぶまれていること、命を支える食において土壌の健康を守る活動が必須であること、ヘルスケア=予防を部分最適ではなく全体最適の中で捉えるべきであること、その実現には人、社会、地球とのつながりを見直す必要があることなどが発表された。さらに、これら課題を科学の力を用いたり、日本の伝統的な暮らし方の再評価など、新たな視座が必要である、という考えが披露された。