
帝京平成大学の薬学生が中心となって活動する「地域連携部」の「健康茶房」が、いよいよ社会実装のステップを踏む。「健康茶房」は多世代による地域支援事業で、健康茶やプロテインといった健康軸の飲料を飲みながら、地域にコミュニティを根付かせる活動。公益財団法人日本ヘルスケア協会理事で、帝京平成大学薬学部教授でもある小原道子氏が推進する、地域連携活動の一環が9 月 24 日(水)に、スギ薬局神田駅南口店にて、局内初の「健康茶房」がオープンした。調剤薬局の待合室をカフェ(茶房)とし、来局する患者はもちろん〝処方箋が無くても立ち寄れる/立ち寄りたい薬局〟を創り上げた。 (レポート=中西陽治)
帝京平成⼤学の薬学⽣の地域⽀援事業と、スギ薬局の薬剤師・薬局の機能が新しいシナジーを⽣む。ドラッグストア業界も注⽬する「健康茶房」が9⽉24⽇(⽔)の17時〜19時にスギ薬局神⽥駅南⼝店で開催された。
待合室の⼀⾓が茶房となったスギ薬局神⽥駅南⼝店は、調剤薬局としての機能はもちろん、⼀般⽤医薬品からドリンク剤、マスクなどの衛⽣⽤品、サプリメントを取りそろえる。そして物販における最⼤の特徴は、スギグループの薬⽇本堂株式会社が持つ強み「漢⽅」「漢茶」を広く取り扱っている点だ。店舗では漢⽅の情報発信からカウンセリング(オンライン)にも応じている。
今回の「健康茶房」とスギ薬局の連携では、その薬⽇本堂の持つ「漢茶」を通じた「薬局コミュニティ」が創り上げられた。

調剤待合室にテーブル4台と椅⼦が各4脚、計16名が座れる茶房と、薬局の外に6⼈のオープン席を⽤意し、処⽅箋を持ち込む患者はもちろん、⼀般⽤医薬品を求める⽣活者にお茶をふるまった。
スギ薬局神⽥駅南⼝店は、神⽥駅から徒歩数分、スギ薬局グループ関東本部の1階に位置する調剤薬局。オフィスビルが⽴ち並ぶ神⽥駅周辺はクリニックも多く、朝晩を通じてオフィスワーカーの往来も激しい⽴地だ。東京都⼼にも近いビジネス街である神⽥駅とあって、スギ薬局神⽥駅南⼝店ではオンライン処⽅箋の応需数も⾼い。ただ⼀⽅で、⼀般⽤医薬品を求める来店客も多く、「健康茶房」準備中もうがい薬を求めるサラリーマンに店舗スタッフが親⾝に対応していた。
「当局近辺には⽿⿐科の診療所が多く、花粉症などのニーズが⾼いため、薬⽇本堂の漢⽅での対応も患者様に⽀持をいただいています」と神⽥南⼝店のスタッフは語る。
スギ薬局のスタッフもサポートに回り、帝京平成⼤学とスギ薬局の『健康茶房』がスタートした。
17 時開始の「健康茶房」には、準備の段階で徐々に席が埋まっていく。
なお開始前のミーティングでは「憩いの場としての『健康茶房』をぜひ患者様、お客様に楽しんでいただきたい。ただ注意すべきは、調剤薬局である以上、お急ぎで処⽅箋をお持ちになる患者様が多くいらっしゃること、そして症状などセンシティブな部分に触れる場でもあることか
ら、⼗分に気を払って⾏うこと」という注意点を共有している。
調剤カウンターでは薬剤師が処⽅箋に応需し、それを待つ患者が「健康茶房」でお茶を飲みながらゆったりとコミュニケーションを楽しんでいた。

今回「健康茶房」で振舞われたのは、薬⽇本堂ならではの健康茶だ。
烏⿓茶をベースにハッカ(ミント)の⾹りが広がるさわやかなブレンドの「花通茶(かつうちゃ)」、プーアル茶の⾵味にナツメやクコのまろやかさとハイビスカスの酸味を効かせた「潤快茶(じゅんかいちゃ)」、紅茶ベースに⾼麗⼈参や霊芝の⾹りを加えた深みのある「活元茶(かつげんちゃ)」、ハトムギ&烏⿓茶ベースにシソの⾹りとハッカの清涼感が特徴的な「五巡茶 ⾦(ごじゅんちゃ こん)」の4種類をラインアップ。
体験者は⼀⼝飲むごとに、その味わい深さに驚き、もう⼀杯とお代わりをオーダーする。漢茶に使われる原材料に興味を⽰す⼈もおり、「薬局で飲めるお茶だから体によさそう」「どの原料も聞いたことがある」と、うなずいていた。
道路に⾯した薬局の、いつもと違う賑わいに不思議そうな顔で⾜を⽌める⼈、「⼀杯だけ飲んでみようか」と参加し1時間たっぷり薬学⽣と話をする⼈、調剤を待ちながら薬や健康についての悩みを打ち明ける⼈、「話していて思い出した。そういえばこの間もらった薬について」と薬剤師に相談をする⼈など、さまざまな薬局に求める機能が浮かび上がっている。
取材で驚いたのが、その茶房に⾯した調剤カウンターに薬剤師がどんどん集まり、細やかな説明と傾聴する姿勢を⾒せていることだ。待合室と調剤カウンターの間にあった距離が縮まり、薬剤師と患者・⽣活者のコミュニケーションが深まっている。これが〝処⽅箋が無くとも⽴ち寄れる/⽴ち寄りたい薬局〟の姿であると感じさせられた。
「健康茶房」に関⼼を寄せる関係者も訪れ、その姿に⽬を⾒張り「こんなにも笑顔があふれる調剤薬局はおそらく⾒たことがない」「本来薬局は『治したい』『良くなりたい』というポジティブな期待が寄せられる場所だった」と感想をこぼしていた。
2時間の「健康茶房」は満席のまま幕を閉じ、終了時間になっても話に華を咲かせる⼈で賑わった。「次はいつ『健康茶房』が開催されるのか」「次は家にある薬を持ってきて話を聞きたい」という⼈もおり、調剤薬局の新しい機能に⾼い評価を⽰している。
終了後のミーティングでは、「健康茶房」とスギ薬局のシナジー効果に⼿ごたえを感じるとともに、⼈件費やスタッフのモチベーション維持
など継続して開催できるスキーム、相談や健康茶試飲から引き⽴ってくる健康ニーズに応需する商品の提案などビジネス⾯での開発も検討課
題として挙がっていた。
持続可能な健康サービスには収益性も⽋かせない。「健康茶房」とスギ薬局の取り組みは薬局機能の底上げと共に、新たな健康サービス構築に向けたチャレンジである。
ドラッグストア・薬局はもちろん、ヘルスケア産業に関わるすべての関係者に「健康茶房」の取り組みにぜひ触れ、市場創造のヒントを得てほしい。
