公益財団法人日本ヘルスケア協会(JAHI)は11月12日(火)に記者会見を開き、新たな協会活動として、立冬を「感染症に備える日」に記念日登録し、2024年の立冬(11月7日)より感染症予防の啓発に力を入れていくことを発表。併せて協会として「乳酸菌・ビフィズス菌部会」の活動を推進し、機能性の乳酸菌・ビフィズス菌の理解促進を店頭および生活者に向けて行っていくことを表明した。
JAHIが目指すヘルスケアは平均寿命と健康寿命のギャップを埋め、元気なまま寿命を全うできる社会を構築することにある。そこから日本の健康保険制度を継承し、かつ国外に優れたシステムとして発信していく。
この理念を改めて啓発していくべく、記者会で新たな方策を述べた。
厚生労働省の2019年の調べでは男性の平均寿命は81歳で健康寿命は72歳、女性は平均寿命が87歳で健康寿命は75歳であり、男性9年女性12年の差がある。
JAHIの今西信幸会長は「この9年から12年の寿命のギャップはこれまで主に医療・介護領域よってフォローされてきた」と指摘し、寿命のギャップにより生活者のQOLの低下および、医療・介護保険料上昇と財源ひっ迫を引き起こしていると述べた。
そのうえで今西会長は「JAHIの狙いはヘルスケアを通じて日本の優れた医療保険制度を維持していくことにある」と改めて述べた。
今西会長は「医療保険制度を維持するためには保険料を上げなければならない。ただ、その限りある資産は〝今まで治らなかった疾患や高度医療〟に注ぐべきであり、医療リソースの適切な分配を行う必要がある」との考えを述べた。
そして日本が世界にもまれな高齢化社会であり、それを維持していることは誇るべきであるとし、「日本食や日本酒などが海外で評価されているように、医療保険のシステムを外に発信していくべき。これは世界に先んじて高齢社会に突入している日本からしか学べない資源である」と強調した。
その具体的化としてJAHIは、このほど「感染症に備える日」を記念日登録し、感染症予防の啓発に着手する。
記念日は1年の中で最も寒暖差がある立冬に定められ、JAHIでは登録日をきっかけに「感染症に備える」啓蒙を行う。同時に、企業・自治体・団体が3身一体で感染症予防を啓発する活動「げんきな免疫プロジェクト」としての活動も推進していく。
記者会見ではJAHI加盟企業からなる「乳酸菌・ビフィズス菌部会」の具体的な活動も紹介された。
部会長の平田啓一氏(キリンホールディングス)は活動の目的を「乳酸菌・ビフィズス菌が健康維持に役立つものである理解は広がっているが、その具体的にまとまった情報が正しく伝わっていない課題がある。そこで部会が一丸となって公益性ある正しい情報を取りまとめ『乳酸菌・ビフィズス菌プロジェクト』として発信している」と話す。
プロジェクトでは、機能性表示食品などに用いられる乳酸菌やビフィズス菌の正しい情報をPOPやQ&Aなどに盛りこんだ店頭向けツールを作成。ツールによりドラッグストアや薬局での薬剤師、登録販売者、管理栄養士といった専門家をサポートし、理解促進を促していく。
また情報サイト「正しく知ろう!乳酸菌・ビフィズス菌」を公開し、ダウンロード可能なPOPを用意するなど店頭での啓発促進を行っている。(参考:正しく知ろう!乳酸菌・ビフィズス菌)
平田部会長は「今後、情報を拡充し販売現場で活用していただき国民に正しい理解を促進していく。活動を進めることで、ヘルスケア市場の正しい活性化。ひいては健康保険制度の維持を図る」と語った。
会見では「乳酸菌・ビフィズス菌部会」の加盟会員による、各種乳酸菌、ビフィズス菌の特徴と取り組みが紹介された。
●キリンホールディングス「プラズマ乳酸菌」
キリンホールディングスの田中圭衣氏は「私たちキリングループの『プラズマ乳酸菌』は、35年以上の免疫研究において、不可能と言われていた『免疫の司令塔に働きかけるメカニズム』を発見した『免疫機能の維持に役立つ乳酸菌』です」と開発経緯とプラズマ乳酸菌の機能について語った。
プラズマ乳酸菌は非生菌の状態で免疫の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞を活性化することができ、様々な食品に加えることができる。そのため、田中氏はプラズマ乳酸菌を通じた免疫ケアの啓発について「例えば青汁やゼリーなどキリングループではフォローしきれない食カテゴリーについて、思いを共にするパートナー企業と手を取り、プラズマ乳酸菌を供給した商品を展開しています」と語る。その取り組みは広がり続けており、プラズマ乳酸菌を含む商品は、現在59商品にも上るという。
●日清ヨーク「乳酸菌NY1301株」
日清ヨークの犬飼美穂子氏は乳酸菌「NY1301株」の機能と特長について語った。
犬飼氏は「日清ヨーク独自の乳酸菌NY1301株は菌数400億個で〝腸内環境の改善〟、また600億個で〝睡眠の質改善〟〝日常生活の疲労感軽減〟の機能を発揮します。〝腸内環境の改善〟は特定保健用食品(トクホ)の「ピルクル400」や機能性表示食品の「十勝のむヨーグルト」で展開しており、また〝睡眠の質改善〟は機能性表示食品の「ピルクルミラクルケア」シリーズの提供を通じて行っています」と語る。
また、新商品の「ピルクルひざアクティブ」はNY1301株の〝腸内環境改善〟の機能を持ちつつ、N-アセチルグルコサミンを加えることで〝ひざ関節の違和感を軽減〟するダブルヘルスクレームを持っており、乳酸菌飲料を通じた健康訴求に力を入れている。
「日清ヨークでは、乳酸菌NY1301株を通じて、お子様からご高齢の方まで多様な世代の健康課題に応えていきたいと考えています」と犬飼氏は方針を語った。
●森永乳業「ビフィズス菌BB536」「ビフィズス菌MCC1274」
森永乳業の堀米綾子氏は、部会が発信している乳酸菌とビフィズス菌の違いについて語った。
堀米氏は「乳酸菌とビフィズス菌は同じ菌、と思われている方がいると思われますが、実は全く違う菌なのです。乳酸菌は主に棒状の形をしていますが、ビフィズス菌はYの字の形をしています。また乳酸菌は生物の腸内や自然界に一般的にすんでいる一方で、ビフィズス菌は主に比とや動物の大腸内にすんでおり、生息する環境がかなり違います。さらに乳酸菌は乳酸を産生しますが、ビフィズス菌は乳酸菌に加えて短鎖脂肪酸のひとつである酢酸も産生します」と特長を交えて紹介した。
森永乳業ではビフィズス菌BB536を配合した「ビヒダスプレーンヨーグルト」(トクホ)や「ビヒダスヨーグルト 便通改善」(機能性表示食品)、ビフィズス菌MCC1274を配合した「記憶対策ヨーグルト」「メモリービフィズス記憶対策サプリ」(ともに機能性表示食品)を提供している。
今冬は新型コロナウイルス、マイコプラズマ肺炎、インフルエンザウイルスといった感染症が流行している。感染流行による経済的損失や社会的不安は、先のコロナ禍で世界中が痛いほど感じたはずだ。医療の現場はもちろん、ヘルスケア産業も一般消費者を巻き込んで「感染症予防」をより積極的に進めていく必要がある。
公益財団として公的なヘルスケア推進に着手するJAHIへの注目度は高く、会見はオンライン参加を含め約30人の記者および関係者が、新しい取り組みに耳を傾けた。